chapter 2 「最初の1ヶ月」
息子が産まれて1ヶ月が経った。
その日は、夏の暑さを少し忘れ始めた過ごしやすい初秋の昼下がりであった。
車で妻と息子が我が家に帰ってきた。
その日から、私はようやく本当に親父になったんだと実感した。
その日を迎えるまで、私は毎週、妻の実家に足を運んだ。
出産は女性にとって命懸け。
とりわけ私の妻は帝王切開で息子を産んでくれた。
体力を回復するために、実家で最初の1ヶ月を過ごすと言うのはよくあることである。
私は毎週息子に会ったが、どこか自分の子どもであるという実感が湧かなかった。
神秘的な生物が、私とは遠い世界で、私の力を必要とすることなく生きていた。
しかし、これからは私と妻がこの子の親である。
少しずつではあるが、親父としての実感が湧いてきていた。